教室を出てからしばらくして、ある教室に到着した。

そこには、バーバーチェアや鏡つきのシャンプー台があって、美容器具までも完備されている。


ここって……美容室!?

校舎にこんな施設があったなんて。

さすがはボンボン学園。

なんでもありなんだなぁ。


「美琴、瑚依。仁愛を連れてきた」

「やっと来たね。待ってたよ、仁愛」

「仁愛ちゃん、いらっしゃい!」


美容室にはふたりのご令嬢がいて、笑顔で私を迎え入れてくれた。


「私は狛犬美琴。よろしく」


狛犬さんは、中性的な美しさの中に凛々(りり)しさがある。

かっこいいという言葉がよく似合う女の子だ。


「私は兎野瑚依だよ。よろしくね」


兎野さんは、ゆるふわでお人形さんみたいな可愛らしさがある。

私が男だったら、きっと放っておけないだろうな。


「ど、どうも……」


私はふたりに会釈(えしゃく)する。


この学園に入学してから誰とも関わったことがないのに、どうして彼女たちは私のことを知っているのだろう。