「大牙様、今あの地味子のことを“ド庶民”っておっしゃいました?」

「“ド庶民”ってことは、生粋(きっすい)β(ベータ)だよな?」

「そんな人間がα(アルファ)クラスに(まぎ)れこんでいたなんて……何かの間違いじゃねぇの?」

「きっと裏口入学したにちがいありませんわ」


大牙くんのせいで、ご令嬢だけでなくご子息まで、一斉(いっせい)に騒ぎだした。


最悪だ……。

こんな形で、私が一般人だということを知られるなんて……。


「おーいっ! 仁愛ちゃん、大丈夫?」


頭を抱える私の目の前で、手をひらひらとさせる大牙くん。


「全然大丈夫じゃないですよ……」

「えっ!? それは大変っ! もしかして、熱でもあるの?」


そう言って、大牙くんが私に触れようとした――そのとき。

突然、野獣様に背後からふわりと抱きしめられた。

同時に、ご令嬢たちが悲鳴を上げる。


「大牙、仁愛は俺のものだって言ってんだろ。気安く触ろうとしてんじゃねぇよ」


聞きたくもなかった声に、背筋がゾクッとする。