「えっ!? なにその反応! もしかして、知らなかった? 俺、すごく悲しいんだけど……」

「す、すみません……」


大牙くんのシュンとした顔を見て、思わず謝る。

すると、彼はすぐににんまりと笑った。


「いいよ!」


切り替えが早いな……。


「ところで、仁愛ちゃんは何を読んでるの?」

「えっと……『美女と野獣』です」

「あぁっ! その話、知ってる! 確か、フランスの文学作品だよね」

「は、はい、そうです……」


私と大牙くんが話していると、ご令嬢たちが何やらひそひそと話し始めた。


「ねぇ、大牙様と話されている方って、いったいどこのご令嬢なのかしら」

「メガネをかけていて地味だし、大牙様と釣り合うような方にはまったく見えないのだけど」


なんか……冷たい視線を向けられているのは気のせいだろうか。

これ以上目立ったら、野獣様に気づかれてしまう。


「あの……申し訳ないんだけど、静かに本を読みたいので、ひとりにしてもらえませんか?」

「あっ! 読書の邪魔してごめんね。俺、ちょっと仁愛ちゃんに興味があってさ」

「ど、どうして……?」

「だって、仁愛ちゃんはこの学園で唯一の“ド庶民”だから!」


悪気もなく爆弾発言をする大牙くんに、私はフリーズした。