――白居仁愛。
高等部からうちの学園に特待生として入学してきたと聞いて、どんな才能豊かなヤツかと思って調べてみたら……まさか、ただの平凡な庶民だったとは。
特に高等部からの入試は、庶民が通う義務教育だけでは解けないようになっている。
それだけ難易度が高いのにもかかわらず、ただのβが満点で合格して特待生になるなんて……。
うちの学園が創設されて以来、前代未聞のことだ。
生まれも育ちも外見も、どこからどう見てもβなのに。
最も偏差値の高い人材が集まるαクラスにいる。
あの女の出自を考えると、この結果はにわかに信じがたい。
いったい、何の目的でうちの学園に来たのか。
気になって、あの女の動向をさりげなく観察していると、教室の隅でいつも本を読んでいる。
そして、放課後は必ず図書館へと足を運んで、閉館まで他のことには目もくれず、読書に没頭しているようだ。
他の生徒よりも目立たないのに、その静かな存在感がかえって目を引いた。
最近は「第二の性」に関する文献を熱心に読んでいたから、βがαを落とす方法でも探しているのかと思っていたけど……。
俺に気のある素振りは、まったくしない。
俺に一切興味を示さない女に出会ったのは、生まれて初めてだ。
なんか、気に食わねぇ……。