「んっ……」


目を覚ますと、見慣れた天井が目に入った。


ここは……俺の家の寝室か。


「いってぇ……」


ベッドからゆっくりと体を起こすと、顔の左半分にズキズキと鋭い痛みが走った。


“あれ”は、夢だったのか?

……そうだよな。

俺の“ラット”を誘発させられるのは、“運命の番”だけだ。

β(ベータ)のフェロモンに当てられるなんて、絶対にありえない。


それに、β(ベータ)が“あのバラの匂い”を感じ取ることも不可能だ。

そのバラは、運命の番のために特別に品種改良されたものだから。


それにしても、ずいぶんとリアルな夢だったな……。

やけに“あのβ(ベータ)”の感触と独特の甘ったるい匂いが残っている。