「お前達! やっちゃえー!」
ツクヨミノミコトが手を振り上げると、足元から這い出た骸骨軍団がマネキン集団を破壊する。
「ふははは! 口ほどにもないねぇ」
蹂躙して高笑いするって、ツクヨミさんは悪役かな。
「…………」
スサノオノミコトは高身長美青年になると、私の剣をじっと見る。
動かない理由。
それは。
「…………使いますか?」
「ああ」
水鉄砲を発射していたビスクドールは帯刀していない。
武器が欲しいのだろうと剣を差し出すと、受け取ってくれた。
そのままスサノオノミコトは踵を返し、地を蹴る。
一瞬で、マネキン集団の中ごろにいた巨大ロボの前に現れると、ロボットの胸に剣を突き立てた。
すると、メキョバキッと音を立てて、剣先に吸い寄せられるように縮む。
「…………怖」
アルミ缶のようにくしゃっと………いやもっと簡単に、紙すぐのようにくしゃっと潰されたよ。
なにあれ、実は紙でできていたハリボテ?
巨大ロボだったものはサッカーボールほどの大きさの鉄の塊になり、剣を振り払うと床に叩きつけられた。
その落下地点にいたマネキン集団は、隕石のように降ったそれの衝撃で四方に吹き飛ぶ。
更地となったそこに、スサノオノミコトが音を立てず着地する。
ドール時と同じ、無駄にフリルの多い服がなびいた。
「え、嘘…………」
マネキン集団が一瞬にして壊滅し、術者の動揺にあわせて人形の動きが鈍くなる。
その隙を逃さず、雷地は市松人形の首を切り落とし、常磐はビスクドールをラリアットで破壊した。
「形勢逆転ってね!」
雷地は複数の剣をおじさんへ飛ばす。
「クソッ……!」
おじさんは、マネキンを盾にして身を守り、雷地と常磐を矢で牽制しながら、散らばっていた五月人形達を自身の周りに配置。
距離を取り、立て直しをはかる。
しかし、その距離を正面から詰める常磐。
「このくらい、痛くも痒くもない」
五月人形の放つ矢を、その硬い体で弾き、進む。
そんな彼を盾に、雷地が迫る。
「長時間、大量の人形を操るお前の力は大したものだったよ。でも、圧倒的な力の前には無力だったねえ」
「見ろ! こっちには人質がいる! お仲間がどうなってもいいのか!?」
おじさんはマネキンに捕まっている意識のない柚珠の頬に、ナイフを突きつける。
「いいよー」
「同じ五家だろう、仲間じゃないのか!?」
「仲間、ではないな」
「そーそ。助けてやる義理もないんだぁ」
仲間じゃないの!?
仲間だと思ってたのは私だけ!?
ただ見守る先輩の顔を覗き込むが、動じる気配もない。
私の近くに来た美青年スサノオノミコトも、肩に座ってきた美少女ドールツクヨミノミコトも、面白くもないテレビ番組でも見るように白けた目をしていた。
「脅しではない! 今からこの従者の頭を踏み砕く!」
「………やれよ」
「殺したのは我ではない! 見捨てた貴様だ!」
先輩の挑発に、おじさんがその体重を遺憾なく発揮し、マネキンが床に投げ捨てた響の頭を踏み潰す。
響の頭は、ガラスのように砕けた。