「………っ」



ステージ側。


違和感の方を向けば、神職の白い狩衣を身につけた大人が数人。

彼らの後ろに、セーラー服と和服を足して2で割ったような服を着た少年少女の団体が続く。

その中で一際目立つ、筋骨隆々な人物は、見間違いでなければ今朝も見た。



「浄土寺常磐……?」



『響少年、雷地少年、柚珠少年もいるね』



目を凝らす。


ツクヨミノミコトが視覚サポートしてくれたのか、顔がはっきり見えた。

雷地の近くに火宮陽橘もいたが、その隣に咲耶はいない。

学校が違うから当然か。

あ、彼らも先輩に気づいたようだ。

へらりと笑いかけられたり、ニヤニヤと悪そうな笑みを向けられたり、ゴミを見るような目を向けられたり。

人気者は大変だね、先輩。

ぼっちな私は気づかれていないと信じたい。

なお、嬉々として手をブンブン振る大男は無視。



「なんの団体?」



「めっちゃイケメン!」



「あの子かわいい! アイドルか何か?」



「レベル高え……」



「デカい!」



「めっちゃ手ぇ振ってくるんだけど、誰の知り合いだよ」



こちらの生徒達も彼らに気付いてざわつく。

ザザザッ、と、放送を入れた時特有の雑音が入った。



「……えー。静かに」



教頭の声だ。



「朝、校長先生が皆さんに伝えた通り、学校と、ここにいる教師、生徒の皆さんで、お祓いを受けたいと思います。水瀬さん、お願いします」



狩衣のひとりが波打つ長髪を揺らしてステージに上がる。

彼の美しい顔立ちに、女子から小さくない歓声があがった。



「はじめまして。本日、校長先生に依頼を受けまして、お祓いに来ました。水瀬です」



人の良さそうな笑みを浮かべて私たちを見下ろす。

顔に騙された一部の女子以外から怪訝な眼差しを向けられている彼は苦笑した。



「初めて会って、いきなりこんなこと言われても、一般に信じられないのは当然です。そうですね……」



グラウンド全体を見回してから。



「………まずはそこの君たち、こちらへ」



指名されたのは、車椅子に乗った、地蔵に崖から落とされた男子達。



「うわっ!」



突如、彼らの真下から間欠泉のように湧き出た水が、車椅子をステージまで運ぶ。

華麗な水の術に、どっと歓声が湧き起こる。



「キャーッ!」



「凄い!」



「超能力かよ」



「手品でしょ」



「んな手品見たことねぇよ」



「どうなってんの!?」



「水道管が破裂したのか!?」



水瀬の印象が、胡散臭い美形から、なんか凄い人に変わった瞬間だった。

好奇、驚愕、憧憬、呆然。

ここにいる全員の注目を集めてなお、彼はただ微笑むだけ。

底の見えない微笑みの武装なんて、逆に怖いよ。


ちら、と先輩に目線を向ける。

鋭い視線を水瀬に送っていた。

ツクヨミノミコトが不機嫌になっているのがわかる。

先輩の視線を一身に受ける水瀬を羨んででもいるのか。



『先輩が抵抗しないのをいいことに、好き勝手しちゃってさぁ』



……違った、先輩の取り巻き女子達にだった。