昼休憩が終わり、全校生徒がグラウンドに集められる。

数人サボってても気づかれないほどに、クラスも学年もごちゃ混ぜになっているのを、私は少し後方から眺めていた。

ぼっち仲間が一定の距離を空けて集団を囲む立ち位置。

ぼっちはぼっちゆえにぼっち同士で固まらない結果によるものだ。

なお、ぼっちが勝手にぼっちに対して仲間意識を抱くだけであり、彼らがどう思っているかは不明である。

ぼっち同士仲良くなれるんじゃないのかと疑うそこのあなた。

天然ぼっち、人工ぼっち、培養ぼっち、だいだらぼっち、自主ぼっち、ぼちぼちぼっち、えとせとらぼっち。

何が言いたいのかわからなくなってきたが、とにかく、ぼっちは奥が深いことをここに添えておく。


さて。



「キャッ! 火宮先輩だ!」



「初めてこんな近くで見た!」



「かっこよ!」



中央組のより中央。

火宮桜陰先輩は女子の取り巻きを多く持ち、相変わらず目立つ。



「……けっ、女子を侍らせやがって」



「……消えろイケメン」



「男から見てもカッコいい」



「お前実は女子だろ」



羨む目を向ける一部の男子や、逆に憧れの目を向ける一部の男子もいた。



「ふっ」



「キャーッ!!」



火宮先輩の不意の微笑みを直撃した女子が倒れていく。


アイドル並のファンサもお手のものだ。

うまく爽やかイケメンに擬態しているが、本性は鬼で大魔王の俺様なんだよなぁ。

目が合ってウインクを飛ばされたので、唾を吐きかけるジェスチャーをした。



ペッペッ。


こっちに構うな。

取り巻き女子の視線がくるではないか。

ほら、そこの厚化粧女子よ睨まないで。

ファンサの相手は私じゃありません。



前髪で顔を隠し、背中を向けて、背中を丸めて、早足で退散する。



『あいつら、先輩にべってりくっついて。………気に入らないなぁ』



いかにも、先輩の隣は私であるべきというようなツクヨミノミコト。



んなことになってたまるか。

火宮桜陰親衛隊女子集団の怖さを知らないのかな。



『あれくらい、私にかかれば一瞬で消し飛ばして……』



騒ぎを起こさないでください。



『騒ぎにする間もなく終わらせるよ』



いやほんとやめて。

俺様大魔王のために罪を犯さないで。



『………俺達の仕事は、火宮桜陰が注目を集めている裏で、補佐することだ』



数秒の沈黙の後。



『……………そっかぁ。そうだねぇ。先輩のお陰で動きやすくなってるし、隣に立つことだけが役に立つことじゃあないもんねぇ。…………うん、わかったよ』



スサノオノミコトの説得の成功に、私はほっと息をついたが。



『今回は、騙されてあげる』



にっこり。


と、効果音がつきそうな声色に、少々恐怖を覚えた。



いやね、騙すつもりは毛頭なくてですね。



その時、それとは別の寒気が、背筋を震わせた。