「結婚式に来てくれないかな?」
唐突に彼女は言った。
噂で結婚することをなんとなく聞いていたが、(なぜ僕が!?)とびっくりした。
「カメラ係になってくれそうな人がいなくて……悠希くん写真撮るの好きだったでしょ?」
「嫌だ……めんどくさい」
僕はこれでもかという不機嫌な顔で言った。
上司である親父は出席することになっているので、ご祝儀はいらないし女の同僚が来れないので代わりに来て欲しいとのこと。
(本当に無神経な女だな……)
結局、親父は一緒に出席でハガキの返事を出してしまったが……
断固としてカメラ係も断ったし、前日も嫌だの一点張りで全く行くつもりもなかった。
……が結局、僕は結婚式に行ってしまった。
親父に無理矢理連れて来られたに近かった。
教会で誓いの言葉に声を震わせる彼女の後ろ姿を見ていると……何かが急に遠くなった感じがした。
ドレスから見える背中に思わずハッとする……
スタンドグラスから漏れる光に照らされた肩甲骨が天使の羽みたいに綺麗だった。
披露宴のお色直し後、扉が開くと水色のドレスを着た彼女が小さなキャンドルを持って幸せそうに微笑んでいた。
会場全員の席にあらかじめ小瓶のキャンドルが置いてあったが、これから始まるキャンドルリレーのものだったらしい。
新婦が各テーブルの代表一人のキャンドルに火をつけ、代表者が隣の人へ、更に隣へと聖火リレーのように回していく。
順番にテーブルを回り、次は……と振り返った彼女と目が合い、真っ直ぐこちらに向かって歩こうとしたのが見えた。
(来る……)
そう思っていた次の瞬間、旦那に何かを指示された彼女は違う方向に歩きだし、
僕と一番遠い席……つまり真向かいの席の人のキャンドルに火をつけていた。
「……あれ?」
合間で流れる恒例の新郎・新婦の出会いのビデオというやつを見ていたはずなのだが……
なぜだか途中から見えなかった。