「……疑問点は、以上です」
「ん。じゃあ署名して。ここと、ここ……ここも」

言われた通りに名前や住所を記入する。

「割印もね」
「割印……?」

ってなに?

「すみません、全然わからなくて……!」
「いや、そんなの当たり前だし」

複数枚ある書類にまたがって印を押すらしい。

「あっ、印鑑がないんですけど……!」
「手書きでもいいよ。ちなみに婚姻届は印鑑要らなくなったみたい」
「そうなんですか」

契約書の各所に手書きで印鑑ぽく書く。
北条君も同じように書く。

差し出された一冊を、受け取る。

「これで契約書は完成」
「これで……」
「課税文書の場合は印紙がいるんだけど、課税ってわけでもないし、まぁ今回はいいかってことで」
「そうなんですね……」
「じゃあ、改めて合意ということで、婚姻届も記入しよう。俺から書くから」
「……はい」

必要事項を記入する様子を隣から眺める。
やっぱり、素養を感じるきれいな字。

北条君、都内に住んでるんだ。新宿区……お仕事の都合とかもあるし、それもそうか?
となると、私もそこの住人になるんだよね。

「はい」

婚姻届とペンを渡され、私も記入する。

妻になる人、か……。
どこに住んでるのかも今知って、北条君なんてさっき私の名前を知って。
クラスメイトというだけでお互いのこと何も知らないのに、こんなものを書いてる私たち。

もう、不思議すぎる。