「こんなのでいいんですか?」
「可愛いじゃん」
「可愛いですけど……」

まぁ……なんでもいいか。契約だし。

「証人の欄、ひとりは金澤さんにお願いするとしてもうひとりいるよな」
「そうですよね。誰か……」

と呟いている私の横をすーっと通り過ぎ、北条君は迷わずレジに直行。

「あの、すみません。僕ら今から婚姻届出しに行くんです! 婚姻届の証人欄書いてもらえませんか!?」
「!?」

店長らしき人に直談判している……。

「え!? なに!? 高校生!?」
「はい! 今日成人したばっかなんですけど、すぐ結婚したくて!」
「えー今日成人して今日入籍!? 凄い気合い入ってんじゃん! まずはコレ買えよな!」
「あ、忘れてました。レジお願いします」

へへへっと人懐っこく笑う。
その感じが……義家族の家のタロウちゃん(ポメラニアン)に似てるなと思った。

「やった、書いてもらえた! なにごとも言ってみるもんだなぁ」
「……北条さんって、すごいですね……」
「だろ?」

ここまできて、クールで塩な人だと思っていた北条君がそうじゃないんだなと理解しつつあった。

ちゃらくて、時々変人で、すごく変なことも真正面から頼んじゃえるほどハートが強くて、行動が早くて、有言実行?

それにしても何もかもが急ごしらえで、こんなんで本当にいいの……っていう感じはするけれど。