「─────お前といい、水篠といい……もう少し先生の気持ちを考えてくれよ」
「あ、水篠……くんもまだ来ていないんですか?」
私はそれまであまり聞いていなかったくせに、"水篠"という名前に反応して、思わず先生の説教を遮った。
"水篠"───それは同じクラスの、私よりひどい遅刻常習犯。
下の名前は、"凪岐"。
私は喋ったことがないけれど、いつも女子に囲まれてキャーキャー言われている男の子だ。
「見りゃわかんだろ。いつものことだ!」
「……ですよね」
凪岐くんが朝いないことなんて、全く珍しいことではない。
むしろ朝だけじゃない。
よく授業をサボるから、凪岐くんがいないことは日常茶飯事だ。