フィアーバの母親が立ち上がり、急に私の腕を掴んだ。


「テイルちゃん、怒っちゃダメよー、もう」


おほほほっ、といつもとは違う笑い声を出しながら、フィアーバの母親は私を引っ張って、部屋から出た。

私の殺気を感じとったのかもしれない。


「お願い、テイルちゃん!」


フィアーバの母親は、私に頭を下げた。


「今だけ、フィアーバの恋人のフリをしてくれないかしら?」


私の殺気を感じ取ったわけではなかった。
まさか、親公認で恋人(ただし偽物)にさせられるとは……


「わかりました」


私が頷くと、フィアーバの母親はホッと息を吐いた。


「ありがとう。王族と結婚とか、いろいろ面倒くさいことになるもの……今度、お礼をするわね」


隠しきれていない本音が聞こえてしまった。
気持ちはわかる。