床に落ちる衝撃を覚悟して、強く目を瞑っているテイル。


「……あれ?」


テイルはそーっと目を開けた。


「……フィアーバ……?」


久しぶりに聞いたテイルの声。
久しぶりに見たテイルの顔。


「なんでここに来たんだ?」


テイルに会えて嬉しいのに、俺の口から出た声は低かった。
このままでは誤解を与えてしまう。


「危ないから、村にいてくれって___」

「私は」


テイルは俺から離れる。


「フィアーバが、オネストと結婚するって聞いて、それがイヤで……」


もしかして、嫉妬してくれてたのだろうか?
自惚れてもいいのか?


「魔王を倒すと、僅かでもオネストと結婚できる可能性があると思ったから……」


嫉妬じゃなかった。

というか、テイルは魔王を倒して、王様の子供と結婚する気でいるのか?
テイルが、王様の子供と……結婚????


「そんなのさせない」


絶対に。
なんとしてでも、テイルと王様の子供との結婚は阻止しなくてはいけない。

テイルより先に、魔王を倒さなくてはいけない。
魔王を倒したら、王様に「俺はテイルと結婚する」って言わないと。
王様の子供の顔に泥をぬることになるけれど、そんなの最初からどうでもいいし、この際、国民の反感とか気にしてられない。
魔王を倒せば、どうにでもなる。