結界を張っている魔族が、どんなヤツなのかも探すのに時間かかる。
結界を張っている魔族を倒したとしても、どうせすぐに別のヤツが結界を張るらしいしな。


「魔王城にたどり着いたとしても、倒していない魔族たちと魔王とで挟み撃ちにされるぞ」


ムンターさんはそう言いながら、杖を軽く振った。


「結界を解除していないから、転送魔法は使えないんだ。死にぞこなっても、簡単には戻れない」


転送魔法を使おうとしたのか、杖に光が集まる。
しかし、その光は弾けて消えてしまった。


「魔王を倒せば問題ないですよ、ムンターさん」

「命がかかっているのに、なんでお前はそんなに余裕そうなんだ……」


余裕があるわけではない。

長期間、俺がテイルから離れていると、テイルに下心を持って近付くヤツが現れるかもしれないんだ。
俺には時間が無い。


「ムンターさんは、なんで俺が結界を張っている魔族を倒さなくても、俺についてきてるんですか?」


襲ってくる魔族を、ハンマーでぶっ飛ばしながら訊ねる。
ムンターさんは鼻で笑った。


「そろそろ、生きているのに飽きたからな」

「死なせませんけど?」

「あぁ。『フィアーバが味方だと死なない』って思い知らされている最中(さいちゅう)だ」


それならよかった。