訪れた桜の季節。四月からちせは、住み続けるO街のアパートから、Y街支店へ毎日一時間の通勤をしている。 「こちらの物件はいかがでしょうか?」 そして同時に、二人で住むための場所を、休みの日に一緒に探していた。 「日当たりも良いですし、おそらく今から内見もできますよ」 新築でこの家賃、部屋数もあるし……。 隣に座るちせと目を合わせたら、ちせはにっこり笑って大きく頷いた。