あの車の中にはどんな人たちが乗っているのか、由佳は想像して楽しんだ。
やがて車は岩上を追い越すと、その前を塞ぐようにして止まった。


岩上は突然のことに足を止めて車を見つめてしまう。
車の横からすり抜けようとしても、一歩遅かった。
後部座席が開いたかと思うと、覆面を被った男がふたり飛び出してきたのだ。


岩上は悲鳴を上げる暇もなく口を塞がれて、車に押し込められる。
後部座席のドアはすぐに閉められて、車は走り去っていった。
残された由佳はクスッと小さく微笑むと、自分の家へ向けて歩みを進めたのだった。