そこに生気は感じられず、呼吸は小さくなっている。
『あぁ、手首を切断した音か』『その手を使って演奏してたんだ?』『最高の演出じゃん!』
コメントの中に和美の生死を心配する言葉は見つけられない。


全員これが演技だと思っているのか、それとも本物と知りながら笑っているのか。
誰もが傍観者だった。
『この子の個人情報も特定したよ』『教えて!』『名前と住所大公開!』


和美の個人情報は容易く特定されてさらされていく。
それを見てキツネ面はまたピアノへと戻っていく。
ポンポンと和美の手首を操って音を鳴らす。


そのたびにポタポタと血が滴り、白い鍵盤が見えなくなっていく。
血は鍵盤と鍵盤の隙間に入り込み、音を乱す。
狂った音を奏で始めたピアノで、更に意味のない音を奏で続ける。


「あはっ」
キツネ面が適当な演奏を続けながら笑った。
ボイスチェンジャーで変えられた声で、笑った。


「あははははは! あはははははは!!」
心の底からたのしそうな笑い声だった。