キツネ面が視聴者へ向けて謝罪し、少し離れた場所でパッケージからハサミを取り出し始めた。
その感に和美が助けを求めるように振り向く。
助けに行きたいけれど、キツネ面はすぐそばにいる。


少しでも不審な動きをすればバレてしまうだろう。
躊躇している間にキツネ面はパッケージから取り出したハサミを持て戻ってきてしまった。
ギラリと光る刃先に和美が青ざめる。


キツネ面は鼻歌まじりに和美へ近づいていくと、椅子の後ろに回り込んだ。
これでは自分がなにをされるのかわからない。
見えないことで恐怖は倍増して和美がガムテープの下でうめき声を連発する。


「ちょっと静かにしてね。じゃないと音が拾えないから」
キツネ面はそう言うと、ごく当然のように和美の頬を叩いた。
パチンッと肌を打つ音が響き、それはすぐに音楽室特有の壁に吸収されて消えていった。


突然の痛みでおとなしくなった和美の後ろにまわったキツネ面は、椅子の隙間からハサミを差し入れた。
刃と刃の間に和美の左手首が挟まる。
和美は刃物の冷たさを感じて我に返った。
身を捩って抵抗しようとするけれど、すでに遅い。