進へ視線を向けてみたけれど、痛みのせいか目がうつろになっている。
傷口は思った以上に深いようで、まだ出血も止まっていない。
このままでは出血多量で死んでしまう危険性だってある。


キツネ面だってそれをわかっているはずだけれど、なにも対処する気はなさそうだ。
カメラの前まで連れてこられた和美はガムテープの下でずっとうめき声を上げている。
それだって音を拾って配信されているはずだけれど、相変わらず視聴者たちはただ動画を楽しんでいるばかりだ。


「では第8問目です!」
キツネ面が高らかに宣言すると、和美が強く体を震わせた。
体を左右に揺すって抵抗しようとっする和美にキツネ面がスタンガンを見せつける。


あれを体に当てられれば一瞬でも気絶して、その間にキツネ面は準備をすすめるはずだ。
和美はおとなしくなり、そのままうなだれてしまった。
キツネ面が鞄に手を入れてなにかを探る。


その本の数十秒の時間が和美には永遠のように長く感じられた。
キツネ面が取り出したのは大きな剪定バサミだった。
それは購入されたばかりの新品で、まだパッケージに入っている。
「おっとすみません。これは準備不足でした」