それだけわかっているのに、拘束された状態ではなにもできなかった。
岩上が準備しているカバンの中にはなにが入っているのかわからないし、下手に刺激しないほうがよさそうだ。
キツネ面を被った岩上が進へ近づいてきたかと思うと、また椅子を引きずって元の場所へと戻した。


ひとまず、進の番は終わったということだろうか。
全員が固唾を呑んでキツネ面の動向を伺う。
キツネ面は血で濡れたマットを上を軽くふいて掃除すると、今度は残っている3人に近づいてきた。


由佳はまた視線をそらせる。
今度はギュッときつく目を閉じた。
次に目を開いたときには悪夢が覚めていますようにと心の底から願う。


だけどその願いが通じることはなく、か細い悲鳴によって目を開けた。
キツネ面が和美を椅子ごと引きずって移動させているのが見えた。
どうやら次に選んだのは和美だったみたいだ。


ホッとすると同時に由佳の鼓動は早くなる。
全身に嫌な汗が流れて行って、これから起きることに恐怖せずにはいられない。