それが恐ろしく感じられた。
同時に、岩上もそうだったのではないかと思い至った。
ひとクラス35人生徒たちがいる。


その中でただの1人も先生の味方をする者はいなかった。
みんな岩上を見下し、蔑み、笑っていた。
誰も授業を聞かず、話もきかなかった。


岩上は初めて担任を持ってから今までずっと、このような状態が続いていたんだ。
そう思ったが、由佳は左右に首をふってその考えをかき消していた。
いや違う。
確かに岩上は孤立していたけれど、今回のこととは大違いだ。


自分にそう思い込ませた。
『なんか音が聞こえてくるな』『獲物はまだいるんだろ? そいつらが必死になってんだろうな』『バーカ。今更遅いんだよ』
進が見ているコメント覧にはそんな書き込みが溢れていた。


だから由佳へ視線を向けて左右に首を振ったのだ。
視聴者の中に自分たちの味方は1人もいない。
ここで音を立てたところで、無意味なことだった。


今視聴している人たちは全員キツネ面の味方だ。
そしてキツネ面の正体は担任の岩上で間違いない。