和美が小声で進へ向けて耳打ちした。
その瞬間進の頬がほんのりと赤く染まる。


「そんな調子のいいこと言って、もし俺が賞金をもらったら分けてもらおうと思ってるんだろ？」

「えへ、バレてた？」


和美は舌を出して笑う。


「和美が考えることは単純だらかな」

「ちょっとなによその言い方。まるで私がバカみたいじゃない」


会話がわっと盛り上がってきたところで教室前方のドアが開いて担任の岩上泉が入ってきた。
まだ若い、20代後半の女性教師だ。

胸まである黒髪を後ろでひとつに束ねて、黒縁ネガネをかけたその顔は整っているもののどこか神経質そうに見える。
由佳はその教師を一瞥しただけでまた友人らとの会話に戻っていった。


「はい、じゃあホームルームを始めます」


チャイムと同時に担任の岩上が言うが、その声は由佳たちの大きな笑い声によってかき消されてしまった。


「みんな静かに、席についてください」