今更足音を忍ばせても遅いと思ったのか、久貴はその勢いのまま音楽室のドアの前に向かった。
そしてドアへ右手を伸ばした、その瞬間だった。


突然内側からドアが開いたかと思うと、久貴の手を掴んで音楽室へと引き込まれたのだ。
「なんだよ!?」
短く文句を言ったものの、音楽室に連れ込まれた久貴の顔面にスプレーが浴びせられた。


その後はなにも言う暇もなく、床に崩れ落ちていく。
「久貴?」
廊下にいてなにが起こったのか見えていなかった由佳たちが音楽室のドアに近づいていく。


その瞬間、白いキツネのお面をつけた人物が姿を見せた。
「え?」
由佳が大きく目を見開いた瞬間、久貴が浴びせられたのと同じスプレーが3人へ向けて噴射された。


息を吸い込んだ瞬間、強い眠気が由佳を襲った。
すぐに立っていることができなくなって体がグラリと揺れる。
壁に手をついてどうにか体勢を整えようとするけれど、それもうまくいかなかった。


由佳はズルズルと座り込んでしまい、眠気に抗うことができない。
どうにか開いている目で進と和美のことを確認したけれど、ふたりともすでに床に突っ伏していて、その体をお面の人間が音楽筆へと引きずり込んでいくところだった……。