だけど、両足はまるで地面に張り付いてしまったかのように言うことを聞いてくれなかった。
「2階からだ!」
久貴が反応して階段へと駆け出した。


「ちょっと、待てってば!」
進がその後を追いかける。
音は確かに2階から聞こえてきたようで、配信者が次の問題のために音を立てたのだろうということがわかった。


今の音は、ピアノの音によく似ていた。
問題を出題するために場所を移動した可能性はとて高い。


さっきまでは足音を立てないように注意していたのに、久貴はバタバタと階段を駆け上がる。
「もう少し、静かに!」


後ろから進がそう声をかけるけれどまるで聞こえていない。
目の前に10万円が転がっていて、手を伸ばせば届く場所にある。
そんな感覚なのだろう。
一気に階段を駆け上がって、音楽室のある最奥へと向かう。


「そんなに足音を立てて歩いてたら、逃げられるよ?」
由佳からの指摘がようやく耳に届いたときには、すでに音楽室は目の前だった。