「こんな怖い場所で暴力はやめてよね」
和美の声が震えながら消えていく。
そして気がつけばお目当ての調理実習室が見えてきていた。


外から見たのと同じで、電気はついていない。
足音を殺してドアに近づいてみるけれど、中から人の声も聞こえてこなかった。
配信者がここにいるとすれば、声くらいは聞こえてきそうなのに。


「ねぇ、きっと誰もいないからやめようよ」
和美の言葉を無視して久貴は勢いよくドアを開いた。
ガラッというスライドドアの音がやけに大きく廊下に響いて、和美がビクリと身を震わせた。


「なんだ、誰もいねぇのかよ」
チッと舌打ちする音が聞こえてきて和美はホッと息を吐き出した。
やっぱり、調理実習室には誰もいなかったみたいだ。


久貴が部屋の電気をつけると、テーブルの上に食器が並べられていた。
近づいて確認してみるとまだ水滴がついている。