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「でも、どこから入るんだ? 施錠されてるだろ?」
先頭を歩く久貴へ向けて進が声をかける。
「そ、そうだよ。きっと校舎内には入れないよ」


和美の声は恐怖で微かに震えていた。
さっきから風が吹いて木々を揺らすだけで敏感に反応している。
「配信者が入ってるんだから、どこかから入れるはずだ」


久貴はそう言うと適当な窓に手を伸ばして開くかどうかを確認している。
しかしどのドアもちゃんと鍵がかかっていてびくともしない。
「や、やっぱり中には入れないよ。帰ろうよ」


和美がか細い声を上げたときだった。
廊下に続く窓に手をかけていた進が「あっ」と小さく声を上げた。
視線を向けるとその窓だけ施錠されていなかったようで、開いていたのだ。


「ナイス、進!」
久貴が喜んで駆け寄っていく。
「きっと配信者もここから入ったんだな。昼間の内に鍵を開けておいたんだろう」


進が推測している間に久貴は校舎へと入り込んでしまった。