進のマンションから出るとそこで久貴が待っていた。
「なんだ、ここにいたんだ」
てっきり先に学校へ行ってしまったと思っていた由佳は安堵してため息を吐き出す。


「さすがに俺1人じゃ乗り込んで行けねぇだろ。10万円いただくなら、武器だって必要だろうしな」
「無理やり奪い取るつもりか」
遅れてきた進がしかめっ面で聞く。


「クイズに正解しなくても金が手に入るチャンスだぞ? それをみすみす逃すのか?」
「でも、犯罪だぞ?」
「バレなきゃいいんだろうが!」
声が大きくなる久貴の肩を由佳が掴んだ。


今はもう夜の8時を過ぎている。
外で大声で話をしていたら、通報されてしまうかもしれない。
「とにかく、学校には行ってみようよ。誰が配信しているのか私も気になるから」


由佳の脳裏にはまだあのロッカーを閉める乱暴な音が聞こえてきていた。
配信者はどうしてあんなクイズを出したのか、それが知りたい。
学校で偶然見つけたからロッカーを使ってみたというのなら、それでよかった。


とにかく、話を聞いて安心したかった。
「おとなしくてしててよね?」
和美が久貴へ向けて小声で言い、4人はようやく夜の学校へ向けて歩き出したのだった。