なにか不審なものを感じてはいるものの、10万円のクイズから降りるのは嫌だ。
そんなせめぎあいがあった。
「なにか気になることがあるなら次の回答で別々に答えてみる?」


考え込んでしまった由佳に和美が言う。
「さっきの問題みたいに教科書をめくる音っていう回答なら、詳細を書く組とアバウトに書く組に分かれて試してみてもいいよな。本当に俺たちが有利になってるなら、4人全員が正解できるはずだ」


「うん……そうだね。そうしてみたいかも」
久貴からの提案に由佳は今度は頷いた。
これなら自らクイズに脱落する必要はなく、確認することができる。


「よし、じゃあそういうことにしよう」
気を取り直すように進が言ったときだった。
次のクイズの準備をしていた配信者が『わっ』と声を上げたので全員がスマホに視線を向けた。


画面からは黒い布が取れていて白いテーブルが映し出されていた。
テーブルの隅には小さな相合い傘が書かれていて、ゆか♡かずみ、と名前がある。
それはほんの一瞬写り込んだラクガキだったけえれど、4人の目にしっかりと映っていた。