「最初の将棋の音だけ、学校内では聞き馴染みがない音だったね」
由佳の言葉に進が左右に首を振った。

「俺たちにとっては聞き馴染みがないけれど、将棋部の生徒たちからすれば日常的に聞いてる音だろ」
「そういえば、そういう部活もあるんだっけ」

部活動に興味のない由佳たちは何部が存在しているかもイマイチ把握していなかった。
「全校にある部活じゃないけど、たしかうちの高校にはあったと思うけど」

「もしかしてこの動画、うちらの高校で撮られてるんじゃないよね?」
冗談半分に言ったのは和美だ。

もしそうだったら面白いと思ったのか、キャアキャア騒ぎ始めてしまった。
「もしそうだとしたら、今学校に行けば配信者に会えるってことだよな。それってなんかすげーよな」

久貴も楽しそうにしている。
生配信を開始してすぐに1万人が集まるインフルエンサーが学校にいるかもしれない。

その妄想は4人の心をくすぐった。
だけど現実的に考えればその可能性はとても低い。
そもそも本当に学校を使って配信しているのかどうかもわからない。

将棋部がある学校だって、珍しくはないのだから。
話が盛り上がり掛けたところで回答時間が終わりを告げた。