今の大きな音で、由佳の脳裏には思い出した光景があった。
それは教室内でロッカーを勢いよく閉めた時の光景だった。

ちょうどあの時の音とよく似ていたから、瞬時に思い出してしまったのだ。
しかし由佳の脳内に流れる映像はそれだけでは止まらなかった。

ロッカーを閉める音。
そして中から聞こえてくるすすり泣きの声。

生徒たちの笑い声……。
そこまで思い出して由佳は左右に首を振ってその光景をかき消した。

目の前の問題に週中する。


「今のって学校のロッカーを強く締めた時の音に似てない?」


由佳は感じたことをそのまま口に出した。
「そうだね、似てるかも」


和美もうんうんと頷いて同意している。
「じゃあ、最初のキュッキュッっていうこすれるような音はなんだ?」

「あれはゴム靴で歩く音に似てた」


久貴の質問に答えたのは進だ。
全員の頭に廊下を歩くシューズと、ロッカーを閉める手の映像が流れた。

学生だからこそ、安易に想像できる光景だった。