それでも学年1モテるくらいに顔が良かったのだ。


「学年1のモテ男でも苦労することってあるんだなぁ」


久貴が進の肩をつついて茶化す。
進は顔をしかめて「うるさいな」とそっぽを向いた。

進の、由佳への気持ちは2年生に上がった頃から始まっていたけれど、夏休みを目前にした今でもその気持が伝わることはなかった。
いっそちゃんと告白しようかと考えるものの、振られて友達でいられなくなることも怖くて、結局なにもできないままこの関係が続いていた。

ダラダラと朝の時間を過ごしていたとき、ピコンと音がして由佳がスマホを取り出した。


「そのダサイ音どうにかなんないの?」

「これはこれでいいの」


流行りに敏感なはずの由佳だけれど、なぜかスマホの着信音などに対してはあまり興味を示さない。
音がして気がつくことができればそれでいいみたいだ。

スマホを確認していた由佳の目が輝き始めた。


「なにかおもしろいことでもあった?」