急に話題を振られた由佳は瞬きをして和美を見た。


「私がヤバイって、なんで?」

「だって、逆らうやつは皆殺しって感じの雰囲気してんじゃん」


和美が笑いながら言う。
由佳は顔をしかめて「そんなことないし」と言い返す。
けれど強く反論できないようで、ごまかすようにチョコレートを口に運んだ。


「確かにそうだよなぁ。1年生の頃の由佳ってそんなに派手でもなかったんだろ? むしろ真面目だったって聞いたけど?」


1年生の頃違うクラスだった久貴が不思議そうな顔をして由佳を見ている。
1年生時代の由佳を知っているのは、進と和美だけだ。


「そうだよ。由佳ってば成績も良かったの。授業の邪魔するようなことなんて、絶対になかったんだから」

「うへぇ。そんなの考えらんねぇ」

「昔の話はもういいから」


由佳はムッとした様子で唇を尖らせて和美と久貴を見る。
「担任がダメなやつだからだよ」
由佳を擁護するように言ったのはやはり進だった。

進はグラスに入ったオレンジジュースを一口飲んで「担任のせいだと思う」と、更に続けた。


「へぇ、そうなんだ?」


和美が由佳へ視線を戻したが、由佳は肩をすくめるだけでなんの返事もしなかったのだった。