ようやく鏡から顔を上げた由佳はキョトンとした表情を久貴へ向ける。
なにも感づいていなさそうな由佳の様子に進は苦笑いを浮かべた。


「大丈夫だよ久貴。俺はもう慣れたから」

「進可愛そう」


和美がご愁傷さまと手を合わせる。
由佳1人だけがなんのことかわからずに首をかしげるばかりだ。

2年A組の中では由佳をリーダーとしてこの4人組が1番の仲良しグループだった。
由佳は肩まである髪の毛を校則ギリギリのラインまで茶色く染めて、先生に気が付かれないように小さなピアスの穴も開けている。

普段は髪の毛で耳を隠していたけれど、放課後や休日になると透明ピアスをつけて耳を出すことが多かった。
和美も由佳の真似のように同じ場所にピアス穴を開けていたけれど、本来ピアスにはほとんど興味がないようで、今はふさがりかけていた。

古屋久貴はクラス内で最もチャライ外見をしていて、校則なんて完全に無視している。
明るい髪色に細い眉、アクセサリーもつけられるだけつけている感じだ。

そんな中で大月進だけが髪色も服装も校則を守っていた。

時々由佳にああするとかっこいいのにとか、こうしたほうがいいのにと助言されるけれど、いちいち校則を破ってまでおしゃれをしたいと思ってもいなかった。