大声で叫んで背中を押す。
進なんて好きじゃない。
私が好きなのは昂輝だけだ。
今までも、これからも。


進が由佳に背をむけて走りだす。
由佳はそれを見送ってから、よろよろと立ち上がった。


少し動くだけで全身が痛くてバラバラに砕け散ってしまそうだ。
それでも路地から出てパトカーの前へと移動する。


「君は?」
警察官の1人が由佳に気がついて近づいてきた。
「私は……」


説明するより先に、背中にドンッと衝撃が走って黙り込んだ。
ゆっくりと振り返ると、そこには血を流した岩上が立っていた。
岩上は口の端からも血を流して、だけど満足そうに笑っている。


由佳は右手で自分の背中を探った。
そこには進が持っていたよりも小型のナイフが突き立てられていた。