「それは別に間違ってないだろ」
進の言葉に由佳は左右に首を振る。


「私は間違えたんだよ」
そう、大きな間違いを犯してしまった。


教師イジメという方法で復讐しようとしたことも、復讐相手を間違えたこともだけど、なによりも昂輝がそれを望んでいなかったことに気が付かなかったことが、間違いだった。


昂輝の彼女は岩上泉じゃなかった。
無関係の人間の人生を壊してしまった。
そんな自分が、進と共に人生を送る資格はない。


パトカーの音が近づいてきて、周囲が騒がしくなり始めた。
眠っていた人たちが起き出して外に出てくる。
「行って」


「嫌だ。俺はいかない」
「いいから、行って!」
由佳は進むの体を強引に路地の奥へと押した。


進は数歩よろけるように歩いて、そしてゆっくりと歩き出す。
「早く行け! あんたなんか、大嫌いなんだから心配すんな!」