小さな空には星が瞬いている。
動画配信を見始めてからもう随分と時間が経過しているのだろう、周囲の家々はとても静かで、眠りについている。


「私のことはいいから、逃げて」
「は? なに言ってんだよ」
由佳を助けるために演技までしたのだ。


ここで置いて逃げるようなことができるわけがなかった。
「進1人ならきっと助かる。だけど私が一緒じゃ、きっと無理」
「そんなことない!」


由佳が進へ視線をむけた。
その目は真剣に進を見つめる。
「進って結構かっこよかったんだね」


「な、なに言ってんだよ、こんなときに」
動揺する進に由佳は笑う。
それはとても楽しげな、年相応の笑い声だった。


「こんなにいい男が近くにいるのに気が付かないなんて、私ってバカだよね。片思いしてた相手をずっと想ってることが美しいことだと思ってた」