「す、進お願い。助けて……」
か細い声で言ったのは由佳だった。
その声に進は振り返って確認してしまいそうになる。
だけど心を鬼にして軽く鼻で笑ってみせた。


「俺は別に、誰かを助けたいわけじゃない」
冷たい声色でそう言い放たれた由佳は絶望的な表情で進の後ろ姿を見つめた。
ハンマーを振り下ろされて殺されそうになったところを助けてくれたのに、どうしてそんな言い方をするんだろう。


「なんで……じゃあなんで……助けたりしたの!」
怒りと恐怖で声が震えて止まらない。
進が敵なのか味方なのかの判断がつかなかった。


元々岩上の味方をしていたというのは本当なのか、問い詰めたかったけれど恐怖で喉が引きつって言葉が出てこない。
「主人公の都合がいいように話が進む物語はつまらないんだ」
進が呟くように言った。


その言葉は由佳にとって徹底的なものとなった。
主人公にとって。