聞いた瞬間ゾッとした。
岩上は誰もいない放課後の教室で1人授業をしていたのだ。
普段誰にも聞かれていないその話を、やっぱり誰にも聞かれていない場所でボソボソと繰り返す。


その光景はどう見ても異様なものだった。
由佳たちが散々イジメてきているから、ついにおかしくなってしまったのだろうと思った。


申し訳ない気持ちが湧いてくるが、これで明日からは岩上は学校に来なくなるだろうとともうと、安堵した気持ちにもなった。
教師イジメがなくなれば、由佳だってもう少しは落ち着くはずだ。


進はなにも見なかったことにして教室を出ようとした。
そのときだった。
突然伸びてきた岩上の手が、進の肩を掴んだのだ。


「ひっ!」
思わず声が漏れてしまう。
岩上が乱れた前髪の隙間からこちらをジッと見つめていた。


「な、なんですか?」
鼓動は早鐘を打っていたけれど、それを悟られないように懸命に感情を押し殺した。