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それは放課後1人で忘れ物と取りに教室へ戻ったときのことだった。
教室内にはもう誰もいないと思ってドアを開けた時、教卓に立つ岩上に気がついた。


「なんだ、先生まだいたんだ」
進はそうつぶやいて自分の席へと向かう。


岩上は担任の教師なんだから、このクラスにいたって別に珍しいことじゃなかった。
だからそのまま忘れものを取ってすぐに由佳たちの元へ戻るはずだった。


でも……。
教室から出ようとして教卓の前を通ったとき、先生の様子がおかしいことに気がついて足を止めた。


先生はさっきから進の存在に気がついていないようで、教卓の前でうつむいてブツブツとなにかをつぶやいている。
なにをつぶやいているのか気になって、耳を近づけた。
「では次の問題……これは教科書34ページに載っている説明文をしっかり読んでいればわかります……」