由佳たち4人だけを騙してここへ誘導することができれば、あとの配信は音だけでなくても構わなくなる。
むしろ、過激な方が喜ぶような仲間ばかりを集めているはずだ。


由佳はいつ襲ってくるかわからない痛みを覚悟して奥歯を噛み締めた。
そんなことをしてもほとんど無意味なことはわかっているけれど、そうしていないと恐怖で泣きわめいてしまいそうだった。


でも、いくら待ってみても痛みは襲ってこなかった。
1分ほどが経過してゆっくりと目をあけてみると、そこには進の姿があったのだ。


深く頬を切られた進は青ざめていたが、両手足の拘束を自分で解いてキツネ面の持つハンマーを両手で抑えているのだ。
「進!?」
「はやく……逃げろ!」


言われてようやく我に返った。
由佳は力づくでキツネ面の体を押しのけると這いずってどうにかそばから離れることができた。


ここにきてようやく進だけが死ぬような怪我を負っていなかったことに気がついた。
手足の拘束が解けているということは、死んだふりをして逃げるタイミングを伺っていたのだろう。
「離せ!」