水澄が自殺をしたのは、昂輝が死んで一週間後のことだ。
その頃由佳はまだ放心状態にあり、たとえどこかで自殺の記事を見聞きしていたとしても、記憶にはとどめておけなかっただろう。


「あなたがどうして教師イジメをするのかわからなくて、少し調べさせてもらいました」
キツネ面が新聞記事を鞄に戻しながら言う。


「それで大方のことはわかりました。この子、勘違いしてるんだって」
鞄から手が引き抜かれた時、そこには黒くて四角いものが握りしめられていた。


スタンガンだ!
進のときに使われたものだから、由佳にもすぐにそれがなにかわかった。
キツネ面はこちらへ移動しながらわざとスタンガンをバチバチと鳴らす。
「や、やめて……」


青ざめて左右に首を振っても、キツネ面はまっすぐに由佳の元へやってきた。


「教師っていいよね。悪い相手が生徒だった場合、すべての個人情報を入手することが簡単にできるんだもの」
キツネ面が敬語を使うのをやめた。


そでに物語は架橋へ入っているのだろう。
ここで由佳を殺してすべてはおしまいになる。