岩上と名乗った先生を見たのはこれが初めてのことで、新任なのだとわかった。
新任なら始業式のときに体育館で挨拶をしているはずだけれど、ぼーっとしていた由佳は今まで気が付かなかったのだ。


偶然由佳のいるクラスに担任としてやってきたから、初めてその名前に気がつくことができた。
岩上泉。
岩上泉。


その名前は絶対に忘れないと誓った名前だった。
その人が今自分の目の前にいる。


長い髪の毛をひとつにまとめて、銀色のメガネの奥の目でクラスを見回している。
その表情はどこか清々しげで、ついに自分の夢を叶えたと言わんばかりに輝いている。


由佳の胸の中にある怒りの炎はひときわ大きく燃え上がった。
やっと会えた。
岩上泉にようやく会えた。


しかもこんなに近くに来るなんて、思ってもいなかった。