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岩上泉。
その名前を刻み込んだまま、由佳は2年生になった。
今でも昂輝のことを思い出して胸が苦しくなる。


何人かの男子生徒たちから告白されたりもしたけれど、付き合う気にはなれなくて断り続けていた。
勉強もほとんど手につかない。
特に昂輝が得意としていた数学の授業は苦痛だった。


なにをしていても昂輝のことを思い出す。
歩いていれば偶然昂輝とすれ違えるんじゃないかと期待してしまう。


昂輝が死んでから半年以上が経過していたけれど、由佳の生活は未だに昂輝一色で彩られていた。
『由佳』
そんなとき、人懐っこい笑顔で話しかけてきたのは進だった。


この人、誰だっけ?
1年生の頃に何度か会話したことがあるような気がしたけれど、あまり覚えていなかった。
だけど相手は自分のことを名前で呼んでくるから、きっと仲が良かったんだろう。


そう思って由佳は笑顔で対応した。