けれど、母親の表情はすぐに険しくなった。
『え? 今病院? なにがあったの?』
病院という単語に座っていた由佳が腰を上げた。


それってどういうこと?
と、視線だけで母親に問いかける。
『交通事故? 大丈夫なの? そう、そうなのね……』


5分ほど会話が続いて電話が切れた瞬間に由佳は母親に『事故ってなに!?』と、質問していた。
さっきから嫌な予感で心臓が早鐘を打ち、背中に汗が流れている。
『落ち着いてきいてね。昂輝くん、今日の昼過ぎに交通事故に遭ったんだって。それで今病院にいるんだって』


交通事故。
病院。
その単語が頭の中をグルグルと回る。
『昼過ぎってなに? 今はもう5時だよ? どうして連絡が来なかったの?』


もっと早くにわかっていれば、病院に駆けつけていたのに。
『落ち着きなさいってば。今昂輝くんはとても危険な状態なんだって。だから連絡ができなかったのよ』
『危険な状態……?』