岩上の話を1人もきかない日もあった。
それでも岩上は教師でいることをやめようとはしなかった。


普通なら鬱になってもよさそうなことを毎日毎日続けていても、岩上は教師で有り続けた。
そしてある日の放課後、4人で教室を出た由佳だったが、校門前までやってきた忘れ物をしたことに気がついた。


勉強道具ならそのまま教室において帰るけれど、残念ながらメーク道具の入ったポーチを忘れてきてしまったのだ。
これじゃ明日の朝メークができない。
面倒だけれど教室へ戻るしかなかった。


「先に返ってて」
3人へ声をかけて由佳は1人で校舎へと戻っていく。


グラウンドからは運動部の掛け声が聞こえてくるし、校舎からは吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。
放課後といっても学校はまだまだにぎやかだった。


廊下を歩けば先生や生徒たちとすれ違うし、別にどうってことのない空間。
そんな中自分のクラスに戻ったとき、岩上がそこにいたのだ。