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由佳は思い出していた。
あのロッカーの音のことを。


ロッカーの音であれだけ反応してしまったのは強く記憶に残っている出来事があったからだった。
あれは岩上の手が完治したあとのことだった。


なにをしても、どうイジメても教卓に立つことをやめない岩上は、クラス内から悪魔みたいだと言われ始めていた。
なにがあっても決して契約した人間から離れないから、そんなあだ名が付けられた。


それを面白がる生徒たちも沢山いたけれど、由佳にとっては全然おもしろくないことだった。
由佳にとっては岩上が教師で有り続けることが許せないことだった。


だから、それを揶揄したあだ名には不快な感情しか抱かなかった。
1度はクラス全員で岩上の授業をボイコットした。