両手をシュレッダーに掛けられてもなお、相手に抵抗しようとしている。
画面には部屋の様子が映し出されているはずだし、運が良ければ誰かが助けに来てくれるかもしれない。


いや、今はもうそれを期待して待つしか道はなかった。
「なにすんだよ!」
カメラを元に戻したキツネ面が久貴の体を踏みつける。


あの時、久貴が岩上の手を何度も何度も踏みつけたのと同じように、容赦はなかった。
両手を失ってほぼ無抵抗な久貴の肋骨あたりを必要に踏みつけて、やがてボキッと嫌な音が音楽室に響いた。


その瞬間久貴がうめき声を上げて動きを止める。
肋骨の一本が折れたのだ。
久貴は白目を向いてそのまま床に転がった。


「ふんっ。余計なことしやがって」
キツネ面は久貴へむけて唾を吐きかけると、その体を引きずって和美の横に置いた。


ふたりとももう動かない。
和美はすでに呼吸を止めてしまっているかもしれないし、久貴だって長く持つとは思えなかった。
たった1人残された由佳の元へキツネ面がゆっくりと近づいてくる。