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由佳の前で大見得を切った久貴だったけれど、特に手札があるわけではなかった。
たとえば岩上のアパートに侵入してカンシカメラを仕掛けてみるとか、その動画を24時間視聴できるようにして金をとるとか。


そういうことは思いつくけれど、1人でする勇気はなかった。
あくまあで頭の中で考えているだけだ。
誰かの部屋に侵入するところからして、現実的じゃなかった。


できることと言えば普段よりも私語を増やして授業を止めるとか、陰口を撒き散らすことくらい。
悪い仲間を使えば岩上1人くらい拘束できるだろうけれど、それで由佳が納得するとは思えなかった。


由佳は、岩上が自主的に学校へ来なくなることを望んでいるのだから。
それなら……。
ある日の授業中、久貴は珍しく真面目に授業を受けていた。


他の生徒たちが岩上の説明を一切聞かない中、1人でノートをとっている。