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由佳を満足させること。
ただそれだけでクラスの行動全体がエスカレートしていくのは目に見えてわかっていた。
久貴たち以外の生徒たちも老化で岩上とすれ違うときにわざと肩をふつけたり、授業でひときわ大きな声を出すようになった。


ほとんどが由佳が怖かったことと、少しでも由佳に満足してもらおうとしてやったことだろうけれど、その中には単純に今の教師イジメを楽しんでいる連中も何人かはいた。


実際に、最初は床にイジメられるのが嫌で岩上を追い詰めていた生徒たちも、途中からは単純にそれがあたり前の日常になってしまっていた。
久貴は時折夢を見た。


他人を攻撃したり、他人に理不尽に接したりしたとき、その時の光景がそのまま夢に出てきた。
現実で教師イジメをしているときには感じなかった、胸の中の澱を感じた。


それは自分の中で深く沈殿していて、手を突っ込んでどれだけ上回してみても浮上して来ることはない。
夢の中で他人をイジメたときには、現実は感じることのなかった悲しみを感じた。


自分がしていることが客観的に目にうつり、それなのにイジメをやることができない。
そんな板挟み状態の自分が夢の中にはいた。